新たなリチウム超イオン伝導材料の開発(科学絵本)
いつも使っているスマートフォン。画面が光り、何かを調べたり、ゲームをしたり、いつでも運べてとても便利です。もちろんこれらの動作には電気を使っているので、充電をする必要があります。
この充電をできる小型の電池の発明がなければ、私たちはこのような小型の電気を使う機械を持ち運んで使う、ということはできなかったでしょう。
今回はその電池のお話です。
川の水が高いところから低いところへ流れるように、電気を運ぶ電子も高いところから低いところへ流れていきます。
低いところにある流れを高いところまで持ち上げるのが、電池の役割です。電池によって高いところに来た電子は、低い方へ流れていき、途中でクネクネ道や門をくぐり抜け、一番低いところまでたどり着いた状態でまた電池によって高いところへ運ばれます。
今回紹介するリチウムイオン電池の中では、主にリチウムくんと電子くんが活躍をしています。
リチウムくんは金属の仲間で、ほかの金属に比べて、電子くんを一番自由にしてあげられる(束縛しない)金属です。
リチウムくんは、いつも元気よく電子くんを送り出します。
そして電子くんは元気よく、低い方へ低い方へと障害物を越えながら進んでいきます。この電子くんの動きが機械を動かす力になっています。
やっとこさ、一番低いところまでたどり着いた電子くん。しかしおどろくことに、先にリチウムくんがたどり着いているではありませんか。
リチウムくんは、電子くんが心配で、先回りして待っていてくれたのです。
リチウムくんの先回りは、実は電子くんとは別ルートです。電池の中に、リチウムくんしか通れない液体ルートがあって、
リチウムくんは、電子くんを送り出した後に、液体ルートを通って、先に着いていた、ということです。
このようにリチウムくんが同じ側に一緒にいてくれるので、電子くんが元の方に戻ることもできます。これがこのリチウムイオン電池が充電可能である理由です。
しかし、もし外部からの衝撃によって、電子くんも液体ルートが通れるようになったら大変なことになります。
障害物のない液体ルートでは電子くんがいつも以上の速さで目的地につくことが出来てしまい、だんだんと液体ルートが熱くなっていきます。
すると、今まで姿を現していなかった酸素くん(O)が現れ、リチウムくんとくっ付いてしまいます。
このリチウムくんと酸素くんの合体は、大きなエネルギーを放出し、電池が爆発してしまうことになるのです。
このような危険がないように、液体ルートより安全な固体ルートを持つ電池を作ろうと研究が進んでいます。
しかし、今まで固体ルートだとリチウムくんの動きが遅くなり、電池としての機能が低くなってしまうことが問題でした。
しかし、今回の研究成果で、固体ルートを不規則な形にすることで、液体ルートと同じくらいリチウムくんが速く移動できる、という材料の開発に成功したのです。
これにより、より安全な電池の実現に近づきました。
電気自動車などにも使われている電池。より安全でより性能の良い電池がこれからもどんどん必要になっていきます。